2012年12月に発足した第2次安倍政権は、自民、公明、民主(現民進)の3党で合意した「社会保障と税の一体改革」に基づき、年金、医療、介護制度や少子化対策の充実を進めてきました。中でも子育て支援に力を入れ、2017年度末に待機児童を解消する目標を打ち出したが、待機児童数は高止まりし、実現は見通せません。年金給付額や医療費の抑制に向けた改革は、参院選を前に高齢者らの反発を懸念し停滞気味。さらに、消費税増税再延期で具体的な財源確保のめどは立っておらず、各分野で予定していた施策をどこまで実施できるか道筋は見えません。
 

◇希望者増に追い付かず
 子育て支援では、2013年4月に「待機児童解消加速化プラン」を策定しました。自治体の保育施設整備に対する補助や保育士の処遇改善を行い、保育施設の定員は2013年度から3年間で約30万人分増える見通し。2017年度末までに計50万人分の拡大を目指します。安倍晋三首相は、消費税率10%への引き上げ延期を表明した今月1日の記者会見でも、「財源を確保し、優先的に実施する」と強調しました。
 ただ、受け皿拡大に伴い利用希望者も増えたため、2015年4月時点の待機児童数は5年ぶりに増加。特に土地代が高い大都市では施設整備が進まず、2017年度末の待機児童ゼロ達成は容易ではありません。安倍政権は子育て支援の充実により、2025年に「希望出生率1.8」を実現する目標を掲げますが、その道のりは遠いです。

◇介護離職ゼロ、財源課題
 20年代初頭までに、年間10万人前後に上る「介護離職者」をゼロにする目標も打ち出しています。介護の受け皿を50万人分以上増やし、他の職種より著しく低い介護職員の給与を月約1万円引き上げる方針を「ニッポン一億総活躍プラン」に盛り込みました。だが、施設整備や本格的な処遇改善には巨額の費用が掛かり、財源確保が課題です。社会保障の充実策として予定していた低所得者の介護保険料軽減については消費税増税延期で部分実施にとどまっています。
 医療保険制度の見直しでは、赤字構造が続く国民健康保険の運営主体を2018年度に市町村から都道府県に移管することを決めました。一方、病院、薬局での患者負担に上限を設ける「高額療養費制度」見直しといった医療費抑制策は与党内に慎重意見があり、具体化していません。


◇低所得者対策に影響
 年金制度維持に向けては、給付額の伸びを物価や賃金の上昇よりも低く抑える「マクロ経済スライド」を強化するため、今年の通常国会に関連法案を提出。しかし、参院選を目前に控える中、年金生活者の収入減につながる改正には与党議員も及び腰で、一度も議論されることなく継続審議になりました。低所得の年金受給者に対する年最大6万円の支給や、年金を受け取るのに必要な加入期間の25年から10年への短縮も増税延期で不透明です。
 急激な高齢化を背景に社会保障給付費は増え続け、2013年度は総額で約110兆円に達しました。財政健全化と社会保障制度の維持には給付抑制に加え、消費税率の10%超への引き上げ検討も避けられないが、安倍政権下では議論できる環境にはありません。2度にわたる増税延期で、一体改革の枠組みは崩れかけており、再構築が求められそうです。